こんにちは。向江凪です。
12月19日に栄のデザインホールで開催された「第2回 名古屋市立大学SPRING 年次報告会」に参加しました。
今回の報告会は、研究の話だけでなく、これからのキャリアや自分に足りない力について考えるきっかけがたくさんありました。社会で活躍するために、専門以外のスキルも意識して伸ばしていきたい、という気持ちが一段と強くなったのも大きな収穫です。
また、SPRINGの支援学生のみなさんとも交流できて嬉しかったです。普段はなかなか会えない方が多いので、こうした場のありがたさを改めて感じました。
なお、今回はボランティアとして運営の補助もしました。D2の7名の実行委員のみなさんが中心となって進行してくださり、D1の私は午前9時30分から会場設営、道案内、質疑応答のマイク運びなどを担当しました。
この日の学びや印象に残ったことを、以下にまとめます。

特別公演
今回は3名の先生が特別講演に来てくださいました。
中西真先生 「老化研究に魅せられて」
中西先生は名古屋市立大学のご出身で、現在は東京大学医科学研究所の教授をされています。先生がどのような思いでキャリアをスタートし、現在の老化の治療につながる研究にたどり着いたのかを伺うことができました。
さらに、老化の治療戦略に関わる、パブリッシュ前の最先端の研究についても聞くことができ、とても貴重な時間でした。
また、中西先生の老化研究の原点となった香川靖雄先生のお話や、ヘイフリック、そのほか先生と関わりのあった先生方のお話も印象に残っています。
私はリソソームの研究をしているので、リソソームやミトコンドリアに焦点を当てた老化治療のお話は、個人的にもとても興味深いものでした。
吉川彰一先生 「企業が求める博士人材:専門性を活かし産業・社会に貢献するために」
吉川先生は、博士号取得後にアメリカでポスドクとして研究をされたのち、アメリカP&Gで研究開発に携わり、さらにイーライリリーの研究開発部門へ転職され、その後役員となられた方です。
どのようにキャリアを紡いでこられたのかというお話も伺うことができ、普段なかなか聞けない外資系でのキャリアのリアルを知れる、とても貴重な機会でした。
後半では、外資系製薬企業が求める博士人材について語ってくださいました。
イーライリリーは日本国内では探索研究を行わず、臨床開発のみを行っているそうです。だから国内で「シーズ探索研究をする生物学者・化学者は求められにくく、代わりに生物統計やデータサイエンティストが求められているそうです(私は製薬企業に行くなら探索研究がしたいと思っていますが、外資系でやるなら海外に出るしかないということですね…)。
その後、博士を持っている・いないに関わらず、求められる人材についてもお話がありました。キーワードは「継続的成功を約束できる人材」です。
そんな夢のような存在を目指せるのか……と最初は思いましたが、実際に「あの人に任せたら成功できる」と周囲が感じる人が少なからずいるのだそう。そういう人になるために必要な素養についても学ぶことができ、長年企業で人材を見てこられた方の言葉には、やはり説得力がありました。
また、博士の強みは専門性だけでなく、サイエンスという共通言語や論理的思考力にある一方で、企業でキャリアの成功確率を上げるには、コラボレーションやコミュニケーションの能力が不可欠、という点も強く心に残りました。
そこで登場したキーワードが「ラーニングアジリティ(Learning Agility)」です。私は今回初めて知った言葉でしたが、外資系企業ではよく使われる概念のようです。
一言でいえば、下記サイトにもある通り「経験から学び、その学びを新しい状況に適用する意欲と能力」とのことでした。
参考サイト:Center for Creative Leadership HPより「Learning Agility – 5 Factors」
https://www.ccoleadership.com/resources/insight/learning-agility-5-factors
専門のことだけに蛸壺のように学ぶのではなく周辺領域にも関心を広げて適応し、成果に繋げていくことが、チームで働く上で重要というメッセージでした。
早速今日からでも、意識してラーニングアジリティ高めていきたいなと思いました。
千田嘉博先生 「歴史の資料を読む−分野を横断する視点」
千田先生は日本史と考古学のご専門で、歴史的な制札や古文書を文字資料としてだけでなく、物質資料として見るという大変興味深いお話でした。
たとえば、楽市楽座などの制札に空いた穴や、古文書の折り目などから、文字情報だけでは読み取れない歴史的事実を紐解くという視点です。細胞生物学が専門の私にとっては完全に分野外でしたが、千田先生がいきいきと歴史資料について語る姿がとても印象的で、「私もこんなふうに研究対象について語れるようになりたい」と思いました。
そして、王道から少し外れた視点で見つめ直すことで新しい発見が生まれる、という研究の成功例としても心に残りました。この報告会を通して一貫して感じた「専門のことだけに蛸壺化するな」というメッセージを、改めて強く受け取ることができました。
令和 7 年度修了生による英語ショートトーク
SPRINGを今年で修了する学生による、数分間の英語ショートトークが開かれました。先輩たちがどのような研究をしているのかをざっくり知れたことに加えて、自分の専門から離れた研究にも触れられて、とても良かったです。
SPRING 学生全員によるポスター発表
本学のSPRING学生(約50名)全員でポスター発表を行いました。専門分野外の研究のデータを理解しようとするのはやはり大変ですが、その分「面白さ」がわかった瞬間は楽しく、自分の研究にもどこかでつながるかもしれない…そんなことを考えながら聞くことができました。
交流会
ポスター発表の後は、ドリンクやサンドイッチを囲んだ立食形式の交流会が開かれました。初めて会った学生ともSPRINGのコンテンツの話をしたり、互いの研究について話したりと、楽しい時間になりました。
研究に打ち込んでいる学内の新しい友達が増えていくことは、私にとってSPRINGの好きなところのひとつです。
まとめ
私は今年の4月からSPRINGの支援を受けていますが、本当に本当に助けられています。金銭的支援だけでなく、研究力を強化するための研修、そして博士を社会に送り出すために必要なトランスファラブルスキルを身につけるためのコンテンツが、とても充実しているからです。
SPRINGコンテンツ以外の、研究関連の各種セミナーの情報も多く共有してくださり、学びの機会をたくさん提供してくださいます。運営をしてくださっている職員の方々も温かい方ばかりで、SPRINGを通じてできた友人たちも、きっとこれから私の宝物になるだろうと思っています。
この場を借りて、もしこれを読んでいるSPRING関係の方がいらっしゃいましたら、深くお礼を申し上げます。そして修了までの2年間も、どうぞよろしくお願いいたします。
ここまで読んでくださった方、ありがとうございました。

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